課題レポート『ピーターパンから読み解くWe Young』 NCT学園1年夢組靜煮草子
夏ですね!!We Young by NCTDREAMの季節ですね!!!!!!
もうすでに皆様が「ネバーランド」らしさだったり「ピーターパン」らしさを肌で感じているWe YoungのMVを、本稿では学生の書くレポートのような形式で、原作・ピーターパンと比較しながら読み解いていきたいと思います。
1章 MVに登場するモチーフ
まずはじめに、MVに見られるピーターパンのモチーフの存在を確認する。
- 窓:ピーターパンの作品における主要人物であるウェンディという少女は、ピーターパンに連れられ弟たちと共に部屋の窓からネバーランドに飛び立つ。
- ワニ:ネバーランドの登場人物であるフック船長が怖がる時計の音がするワニ。
- 影:ウェンディが語るお話を聞きに来たピーターパンが見つかり逃げる際に、子守の犬(ナナ)に影のみが捕まり外れてしまったため、その後影をウェンディに縫ってもらう。
- ロンドン:ピーターパンの舞台はロンドン。
以上、4点の ピーターパンのモチーフが確認できた。We Youngがピーターパンを題材にしていることは間違いないだろう。
2章 ピーターパンとは?
ピーターパンとは、イギリスの作家ジェームス・マシュー・バリーが書いた小説、戯曲に登場する架空の人物である。
ピーターパンが登場するバリーの作品は4作あり、ストーリー的に冒険活劇と誕生秘話の2種類に分けることができる。
ピーターパンを理解する上で2種類のストーリーはどちらも欠かせない。そこで本稿ではそれぞれのストーリーから1作ずつ、冒険譚である『ピーター・パンとウェンディ』と、誕生が語られている『ピーター・パンの冒険』の2作をテキストに用いた。なお以下、これらの本文をテキストとして引用する際は引用の最後に前者を(青○○ページ)、後者(赤○○ページ)と表記することとする。
★ここで、ピーターパンとWe Youngを論じる上で特に重要なキーワードである「ピーターパンの人物像」と「ネバーランド」について説明する。
【ピーターパンの人物像】
「ピーターが非常に年をとっていることもわかりますが、実をいうと、年齢は昔からずっと変わらないのです。(中略)ピーターの年齢はいつも一週間です。」(赤28ページ)このように、ピーターパンは唯一永遠に年をとらず、永遠に子どもでいることのできるキャラクターとして描かれている。また、子どもとは原作において「夢を信じる心を持ち」(青10ページ)「陽気で無邪気で情け知らず」(青302ページ)な存在であるとされていて、ピーターパンはこれらの特徴に当てはまり、作者の思い描く「子ども」がピーターパン一人に詰めこまれている。ウェンディのお母さんに養子に誘われた場面では、大人になりたくないという理由で激しい口調で養子になることを断っている。大人になりたくない理由としては、ピーターパンが信じていた彼のお母さんに窓を閉められてしまい、お母さんの元に戻ることができなくなってしまったという過去が関連してくると思われる。こういった過去からも、「母」というものに情景や恨みという複雑な感情を抱いていると考えることができる。
【ネバーランドの表現】
「心にある国」(青18ページ)のルビとして「ネバーランド」という文字が振られている。他にも「コンパクトで何不自由なく過ごせる」「何一つじっとしているものがないので、ごちゃごちゃと複雑に入り組んでいる」「一人ひとり違います」(青19ページ)というような表現がされていることから、ネバーランドとは人の心から作られる十人十色の現実と想像の世界であると考えられる。「ネバーランドの夢を見ているすべての子どもたちに」(青231ページ)ともあるため、ネバーランド=夢の中と捉えても差し支えはないだろう。そして子どもが持っている夢を信じる心がネバーランドへの切符であると考えると、信じる心が生み出す真実と言い換えることができる。
ピーターパンの人物像とネバーランドに関して頭に入れたところで、以下、We YoungのMVの内容を確認しながら分析していきたい。
3章 MVのストーリー
①夢の中への導入
ポイント:テレビの中のNCTDREAM
NCTDREAMはテレビの中の存在であり、女の子はNCTDREAMをテレビ越しに見ている。
ポイント:部屋に現れるNCTDREAM
それまでテレビの中にいたNCTDREAMが、女の子が眠りに就くのを境に、部屋に現れるようになる。女の子が眠った後の変化ということから、NCTDREAMが部屋に存在しているのは女の子の夢の中の世界であると捉えることができる。
②ネバーランドへ
ポイント:窓から冒険に出かける
夢の世界に入った後、NCTDREAMが窓を開けると窓の外がロンドンの風景から幻想的な景色となった。前述にあるように、ピーターパンの物語では窓からネバーランドの冒険へ飛び立ったことからも、ロンドンの風景でなくなった窓の外の景色はネバーランドの世界であることが読み取れる。
逆説的に上の画像に見られるファンタジーな背景がネバーランドであると仮定できたが、ネバーランドの途中の場面ではお菓子を食べることで子どものイメージを強調していたり、次々と舞台が変化していく様子があったりと、二章で記述したネバーランドの表現と一致する部分も多い。
③ワニと影
ポイント:ワニの出現とともに逃げる影
ポイント:影を探しに行くNCTDREAM
マークがマークを見ている場面から、女の子の夢の中に入り込むNCTDREAMというストーリーではないかと推測できる。(=女の子の影は女の子の夢の中の夢に逃げた。)ピーターパンにおいて、夢を信じる心をマトリョーシカに喩えている描写がある。マトリョーシカ、また、夢の中の夢といった表現は、DREAMに限らず、NCTのコンセプトと合致するものだ。
④現実の世界へ
ポイント:たくさんの窓
ネバーランドの入り口=窓をたくさん描くことで、ネバーランドとは人の心にあるものという特徴を表している。
ポイント:テレビの中のNCTDREAM
最後、MVではテレビにNCTDREAMという文字が映し出されて終わるが、ネバーランド内での終わりは上の画像のエンディングポーズをしている場所であるため、この四角い箱はテレビを象徴していると考えられる。夢の世界からテレビの中の存在であるNCTDREAMという現実に戻ってWe YoungのMVは幕を閉じる。テレビの存在は現実を表すと共に、ネバーランドのと繋がりという役割も果たしていた。
4章 ピーターパンとの相違点
ピーターパンとの相違点は2点ある。1点目はWe YoungのMVストーリー構成が救出劇となっている点、そして2点目は女の子から影が逃げたという点である。ピーターパンの冒険を描いた『ピーター・パンとウェンディ』では、救いを描かれた人物は登場せず、また影はネバーランドに連れ出したピーターパン側のモチーフとなっている。これらの相違点から、MVにおけるNCTDREAMの役割を考察したい。
初めに三章の③にて述べたワニと影について触れておく必要がある。
【『ピーター・パンとウェンディ』と比較するワニ】
既に少し述べたように、時計の音がするワニは、ネバーランドの登場人物であるフック船長が一番恐れているものである。フック船長とは、イートン校での生活で身につけた礼儀への執着心が強いキャラクターであり、子ども(=海賊)になりきれないフック船長は、礼儀を持つピーターパン(=子ども)に憧れと憎悪を抱いていた。そんなフック船長が、ピーターパンをこの世から消し去ることができた(実際には生きていたが)と思い込んだ後からワニの時計の音が止まっている。よってピーターパン(=子ども)への恐怖心が時計の音がするワニに反映されていて、時計の音=大人になってしまう時の流れを象徴していると捉えることができる。女の子の夢=ネバーランドの世界においても、ワニとは女の子の負の感情の象徴であり、ワニの登場によってネバーランドの世界が崩壊し始めたと考えられる。
【『ピーター・パンとウェンディ』と比較する影】
こちらも少し前述にあるように、お話を聞きに来て取り残されてしまったのがピーターパンの影である。ピーターパンの人物像として、「母」への想いがあることからも、取り残された影とは、お母さんが子どもに読み聞かせるお話への憧れというピーターパンの深層心理である。また、外れた影を石鹸でつけようとしていた行為や、有名な「指ぬき」エピソードから、ピーターパンの無知を象徴するものとして影の存在を挙げることができる。これらのことから、影はピーターパンの本質を表しており、We Youngにおいても、女の子の影は女の子の本質、または本心であると考えることができる。そして、女の子の本質である影はワニの存在により、現実からより離れた夢へと逃げ込んだ。
これらのことを踏まえ、相違点に着目すると一体NCTDREAMのどのような役割がわかるのか?
まず1点目について論ずる。救いを得られた女の子は、普段辛い想いを抱えていることが推測される。女の子は辛い想いを抱えているからこそ夢=ネバーランドにワニが登場し、本心である影が逃げてしまった。女の子が辛い想いを抱えていることを裏付ける要素として、女の子の容姿に着目したい。女の子の容姿は赤毛・ソバカスである。イギリスでは赤毛に対する偏見があったということからも、女の子は決して幸せな生活を送ってはいないと仮定ができる。また女の子は影をNCTDREAMにつけてもらったことで、最後に笑顔を見せた。このように不幸な女の子を助けに行くヒーローのように描かれていることから、NCTDREAMは人々を幸せにする役割を担っているということがわかる。
2点目に関しては、NCTDREAMはピーターパンのように永遠の存在ではないということを導くことができる。MVで女の子の影のストーリーが組み込まれたのとは異なり、原作では主人公であるピーターパンに影のモチーフが付与された。ピーターパンは永遠の子どもであるが、前述にあるよう、それは「母」へのしがらみによる永遠である。そしてピーターパンの中にある「母」の存在は影によって表現されていた。MVにおいて影が女の子側のモチーフへと転換していたということは、NCTDREAMにとっては「子ども」であり続けなければならないというしがらみを持たないと言うことだ。つまり、2点目の相違点により、NCTDREAMは永遠に子どもなわけではないというピーターパンに対するアンチテーゼも同時に与えられていると考えることができる。
結論
ピーターパン、とりわけ「ピーターパンの人物像」と「ネバーランド」に焦点を置き、We YoungのMVを分析してきました。「ピーターパンの人物像」と「ネバーランド」に共通するものは「信じる心」です。「信じる心」について、作品内では、妖精の存在を信じることで妖精が存在するし、「飛べるかどうか疑問に思った瞬間、永久に飛べなくなってしまう」(赤35ページ)、「棒きれ船は大海原へと乗り出しますが、ヨットは池を行ったり来たりするだけです」(赤20ページ)という表現があるように、真実をもたらすものとして用いられています。
上記を踏まえて、1章から4章で論じたことをまとめると、We Youngのコンセプトとしてピーターパンが選ばれた理由や、作品のテーマが見えてくると思います。
We YoungのMVでは、テレビ越しに見ていたNCTDREAMと、夢=ネバーランドの世界に旅たつことで、女の子が幸せになる。でもNCTDREAMは決して永遠じゃないし、夢とは子どもが持つ信じる心によってのみ真実になるんです。
また、ここで大切なポイントとして「ピーターパンの人物像」というキーワードを再確認しましょう。1〜4章ではあまり直接的にピーターパンの人物像に触れてこなかったんですけどピーターパンの人物像=「子ども」=夢を信じる心を持っています。曲名や歌詞、そしてNCTDREAM自体のコンセプトから想像できる「子ども」、そして「子ども」を媒介として女の子はネバーランドに旅立ち、幸せを掴んだんですね〜。
以上のことからわかるように、We Youngのコンセプトとしてピーターパンが選ばれた理由はピーターパンの主題がNCTDREAMを通じて(SMが)伝えたいことと非常に合致していたからです。つまりWe Youngは、NCTDREAMを信じる心が生み出す真実をテーマとした作品だと私は考えます。
現実であるテレビの中では永遠が可能であるという事実がアイロニー的ですね。
結論 → 「NCTDREAMは人々を幸せにするテレビの中の存在であり、いつかは大人になってしまう存在であるが、彼らの存在を信じることでNCTDREAMは私たちの心の中で永遠の真実となる。」ということをWe Youngは私たちに教えてくれた。
なのでマークの卒業とか別にマークの存在を信じてさえすれば永遠に7ドリームなので…………
時間があったら追記したい蛇足(メモ):歌詞と衣装とミンヒンジっぽさについて